よびごえ日誌


2021.06.11 【2021】よびごえ日誌 小田より

みなさん、こんにちは。小田です。
2021年度、初めての投稿が6月になってしまったこと、
例年のよびごえ日誌を思うと、とても遅いようですが、
一方で、この記事の裏側で、よびごえメンバーがどれほどの思いで
学びを継続しようと努力していることか、想像いただけることと思います。
 
さて、新年度を迎えたこともあり、いくつか
合唱団よびごえで合唱を学ぶということについて、
参考になりそうなことをメモをしておきたいと思います。
 
1.大学に入るまでに経験してきた様々な合唱
大人数で声を合わせて歌うということを合唱という場合、
学校は合唱をする機会が比較的多いように思います。
それは、例えば英語の時間以外で英語を使うことと
音楽の時間以外で音楽をすることを比較しても分かりやすいかもしれません。
行事のたびに校歌を歌うかもしれませんし、
「朝の歌」というものを設定している学校では
月によって歌をかえながらも、みんなで歌うと思います。
音楽集会や校内合唱コンクールに視点をよせると、
それは合唱することに重きを置いたイベントのようにも思います。
さらには、クラブ活動や部活動として、合唱に没頭することもできます。
 
授業としての合唱のみでなく、行事としての合唱、特別活動としての合唱、
こうした様々な合唱体験を経て、いま、私たちは大学で音楽を専攻しているのだということを
今一度認識しておくのは有益だと思います。
 
2.合唱の教育的成果を左右する要因を探すために
教員を目指す・目指さないを別として、
今日的に、合唱をテーマとした研究で何が言われているのか
その一端を知っておくことに損はないと思います。
 
研究論文や研究報告をいくつか眺めてみると、
合唱団という組織そのものの効用として、
合唱団の存在によって、所属団員と地域の人が繋がることができる
というものがあげられていたり(「地域における児童合唱団の機能と役割」, 2020年)、
合唱活動についての効用としては、
合唱活動を通して得られたあらゆる人とのつながりが醸成され、
それによって参加者自身がコミュニティへの帰属意識を高め、
さらには精神的健康への影響が考えられること、
また、そうした土台の上で情操の豊かさや身体的健康、well-beingへと
繋がっていく可能性が言われています
(Benefits of choral singing for social and mental wellbeing, 2012)。
 
もちろん、他にもあまたの研究が実施されていますが、
1つ、キーワードと考えられるのは「関係性」なのだと思います。
 
当たり前のことかもしれませんが、
仲の悪い人とはなるべく一緒に遊びたくないように、
仲の悪い人と一緒に合唱をしなければいけなくなったとき、
おそらく歌う気力が自然と減衰するかもしれませんし、
そうすることによって、
いつもと同じ 体操➔発声➔パート練➔全体練➔振り返り というルーティンをこなしたとしても
その質感、つまりはその過程を通して得られた学びや満足感はいつもとは異なることが予測されます。
(一人で食べるご飯は寂しい。みんなで食べるとおいしい。
 もしそう感じる方がいらっしゃる場合、
 誰と一緒に食べるか、ということによって、同じものを食べていても満足感が違うというのも
 面白いですし、上記と似ていますね。)
 
つまり、合唱を思いっきり楽しんだり、合唱を教育的に考えようとする場合、
「関係性」という視点から教育的成果の質を見ようとすることは有益なのかもしれません。
 
先生と団員の関係性
 
団員同士の関係性
 
団員と団員以外の人との関係性
 
上記3つの関係性は、合唱活動に常につきまとうものであり、そしていつも可変的です。
つまり、先生と団員の関係性は昨日は良好だったかもしれないけれど、今日もそうとは限らない、
団員同士の関係性も、誰か一人がけんかをはじめると一気に調和が崩れ、稽古に支障が出るでしょう、
団員以外の人から団についてほめられたり、叱責されれば、それは合唱活動にも影響するでしょう。
こうしたいくつかの関係性が同時かつ可変的に関わりあって、
ある一瞬の雰囲気(楽しかったり緊張感があったり)が生まれると考えられます。
 
私たちが当たり前のように行っている合唱活動中には
実はいくつもの見えないエネルギーがつきまとっており、
それらが、合唱活動を楽しくしたり、そうでなくしたり、
また合唱を通した学びを充実させたり、そうでなくしたりするのかもしれませんね。
 
3.<私>を中心に置いた合唱活動の多様さ
合唱活動と一言にいえども、実際、私の中では何が起こっているのか
考えたことがありますか?
 
体操、発声、パート練、全体練、休憩…
 
という、具体的な区切りで考えても良いですが、
きっとそれだけではありません。
 
美しい声を出せるようになりたい…!
あの人、最近元気ないな。声をかけてみよっと。
この曲のこの部分って、どういうイメージで書かれたんだろう…
 
と、自分自身の歌唱力の向上に自助努力することや
他者を思いやること、作曲者や詩人の意図を創造することなど、
そんなことまで合唱活動の内容として含めていくと、
<私>は思いのほか、短い時間の中で非常に多様な合唱体験をしていると考えられます。
 
こう思うと、放課後にみんなで一緒に楽しく歌うことを主とした合唱集団と
全国大会上位入賞を目指す合唱集団を比べようとすると、
体操、発声、パート練、全体練 というルーティンは同じだとしても
そこでどのような空気が流れ、なにが達成されれば満足なのか、という質的なものは
大きく異なることが想像できると思います。
つまりは、ルーティンは同じでも、そこで得られる学び(体験)は異なります。
 
「合唱活動」というものを体操、発声といった活動の区切りで見ることに加えて
心的な側面など、異なる視点からも見ようとすることは
合唱活動について理解を深めるうえで有益に思います。
 
4.合唱団よびごえで何を学ぶか
ここまでは、小田の合唱に関する持論を述べたにとどまりますが、
合唱というものが、私たちにとって身近な体験だからこそ、
整理しづらいかもしれないこともあると思い、
年度のはじめということで、少しだけキーワードになりそうな視点をピックアップしてみました。
 
さて、2021年度が始まり
今だからこそ、「合唱団よびごえで何を学ぶか」について
みなさん自身で考えてほしいと思います。
 
この問いは、いまでも僕のとても大切な問いです。
これまでの卒業生が築いてくれた歴史があるからこそ
僕はこのテーマを今年も考えることができます。
 
すでに、団員の方はお分かりと思いますが、
この団はとても自由な団です(僕はそうであってほしいと願っています)。
 
ヒエラルキーとは無縁のような団だと僕は思っていますが、
もしヒエラルキーというものがあると言えるとすれば
それは「合唱を学びたいという意欲」によって発生するのかもしれません。
 
そして、優れた音楽経験をもった人が集まっており、
みなさん、高い学力をお持ちの方が結集している点で、
とても特異な合唱団と言っても良いと思います。
 
一方で、そうした仲間と共に過ごせる時間は
いつも、卒業に向けたカウントダウンの中にあります。
 
僕個人としては、
みなさん自身がよびごえで何か成長を実感できることをなし得てほしい、
一人ではできなかったことも仲間と共に学びきってほしいとも思います。
 
音のとりかた?合唱の発声の仕方?和音の決め方?
スコア・リーディング?パート練習の仕方?
団をまとめる方法?合唱の練習の組み立て方?
 
上記は、ほんの一部分ですが、みなさんはここで
いま目の前にいる仲間と一緒に何を学びたいですか?
 
一緒に、達成しましょう。
 
小田